母が愛したフクロウと、プロジェクトに込めた想い
															「なぜ『Owl Project』という名前にしたんですか?」
最近、よくこんな質問をいただきます。英語で「フクロウ」を意味するOwl。なぜフクロウなのか。そこには、私の人生を支えてくれた一人の女性の存在があります。
今は天国にいる、私の母の話です。
母の素直なフクロウ愛
母は昔から、本当にフクロウが大好きでした。
「なぜフクロウが好きなの?」と聞くと、母は少女のような笑顔で答えていました。
「だって、『不苦労』でしょう?苦労したくないもの」
なんて素直で、なんて純粋な理由でしょうか。現代の私たちが忘れがちな、シンプルで美しい発想です。
昔の人だった母にとって、フクロウは「不苦労」。苦労を避け、幸せを願う象徴だったのです。でも、その願いは決して自分だけのものではありませんでした。
母がいつも一番に考えていたのは、父のこと、私と弟のこと、そして何より孫たちのこと。「不苦労」の対象は、いつも家族全員だったのです。
そんな母の愛情深さを象徴するような、小さなエピソードがあります。
小さなキーホルダーに込められた愛
母は裁縫が得意で、小さなポーチを自分で縫っていつも使っていました。そのポーチには、妻が選んでプレゼントしたフクロウのキーホルダーが付いていました。
母はそのキーホルダーをとても大切にしていて、どこに行くときも必ず持ち歩いていました。買い物に行くときも、病院に行くときも、小さなフクロウが母と一緒でした。
「お母さん、そのフクロウ、可愛いですね」
近所の方にそう言われると、母は嬉しそうに答えていました。
「息子のお嫁さんが選んでくれたのよ。不苦労のフクロウなの」
妻が選んだキーホルダーを通じて、母は家族の絆を感じていたのかもしれません。そして、そのフクロウに家族の幸せを託していたのでしょう。
Owl Project誕生の物語
母が天国に旅立ったのは、今年の4月23日のことでした。
長年、実家で父と二人で仲良く暮らしていた母。最期まで家族のことを気にかけ、孫たちの将来を心配しつつ、楽しみにしていました。今、父は実家で一人、母との思い出と共に過ごしています。
そんな母の特別な想い出が蘇ったのは、母が亡くなって1ヶ月ほど経った頃、新しいプロジェクトの名前を考えているときでした。まるで母が天国から「今よ」と背中を押してくれたかのようなタイミングでした。
ある休日の昼間、いつものようにソファでうとうとしている私を見て、妻が笑いながら言いました。
「あなた、また小鳥みたいにうとうとしてるわね。でも小鳥っていう体の大きさじゃないわね…小鳥じゃなくてフクロウ!(笑)」
妻の突っ込みに、私たちは笑いました。そこから、不思議な会話が始まったのです。
「そういえば、フクロウは『森の賢者』って言われるよね。今回の新規事業の象徴に良いんじゃない?」
「それに、フクロウは知恵の女神ミネルヴァの肩に止まっているものね。」
妻の言葉に、私は深く頷きました。でも、妻の次の言葉が、私の心を一番強く動かしました。
「お母さんも、フクロウをとても好きだったわよね。『不苦労』だから、フクロウ。私がプレゼントしたキーホルダーも、いつも大切に持ち歩いてくれていたし」
そうでした。母のフクロウ愛を、私は忘れていました。
「そうそう、障がいのある方の施設でも、『不苦労』からフクロウをイメージに使っているところが多いのよ。やっぱり障がいのある方は苦労が多いから、少しでも苦労が減るようにって」
妻の言葉を聞いているうちに、私の中で何かが繋がりました。
今回、新規事業に挑戦しようと考えたのは、母が背中を後押ししてくれているような気がしていたからです。母が亡くなってまだ間もない中、このアイデアが浮かんだなんて、偶然とは思えません。きっと母が天国から「みんなを幸せにしなさい」と教えてくれたのでしょう。
母がいつも家族の幸せを願っていたように、このプロジェクトも多くの人の幸せに繋がるものにしたい。
「そうだ。今度の新規事業は『Owl Project』にしよう」
私は妻に提案しました。
「フクロウを英語にして、『Owl Project』。母の想いも込めて、みんなが『不苦労』になれるようなプロジェクトにしよう」
プロジェクトに込めた想い
こうして誕生した「Owl Project」。この名前には、母から受け継いだ深い想いが込められています。
母の「不苦労」への願いは、決して楽をしたいという意味ではありませんでした。家族みんなが健康で、幸せで、余計な苦労をせずに過ごせるように。そんな純粋な愛情から生まれた願いでした。
現代社会では、多くの人が様々な苦労を抱えています。仕事の悩み、人間関係のストレス、将来への不安…。Owl Projectを通じて、少しでも多くの人の苦労が減り、笑顔が増えることを願っています。それは、きっと天国の母も喜んでくれることでしょう。
フクロウは夜行性で、暗闇の中でも遠くまで見通すことができます。不確実な時代の中で、明るい未来を見つけるお手伝いができれば。そんな想いを込めて、私たちは前に進んでいきます。
天国の母へ
母さん、覚えていますか?
あなたがいつも大切に持ち歩いていたフクロウのキーホルダー。あなたの「不苦労」への純粋な願い。家族みんなの幸せを誰よりも祈ってくれていた、その優しい心。
父さんと二人で笑い、時には心配し、いつも家族のことを話していましたね。今、父さんは一人でその家にいます。きっと、あなたとの思い出を大切に抱きしめながら。
そして今、私はあなたの想いを胸に、新しい挑戦を始めています。「Owl Project」という名前に込めたのは、あなたから教わった愛情と、すべての人の幸せを願う気持ちです。
あなたが天国に旅立って、まだ2ヶ月しか経っていません。このタイミングでこのアイデアが浮かんだなんて、偶然ではないでしょう。きっとあなたが「今よ」と教えてくれたのですね。
ありがとう、母さん。
あなたの愛したフクロウと一緒に、私たちは歩み続けます。みんなが「不苦労」で過ごせる世界を目指して。
そして、家族みんなが笑顔でいられるように。
小さなキーホルダーから始まった物語。それが今、大きなプロジェクトへと育っています。
母の想いは、きっとこれからも私たちを導いてくれることでしょう。
